focuson_cultureのブログ

洋服と音楽と映画と。何かに夢中になるキッカケになれば。

【FASHION】MILITARY OF LIFE

 この惑星には、戦争というものが存在する。そして、戦争で戦うソルジャー達の身体と命を守るために、多くの軍服が作られてきた。それはいつしか、1つの洋服として、ファッションとして市民権を獲得した。

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 今回は、命を守るために作られた洋服についてお話ししたい。

 

【はじめに】

 オーストラリアの豪林火災では、消火活動のために世界中の軍が手を差し伸べている。9.11以降、世界の紛争は中東へと変わった。イラクアメリカの危機は他人事ではない。

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 不確実な世の中を生き抜くために、今何が出来るのか。先の見えない国際問題に僕だけじゃなくて、きっと誰もが不安がってると思う。1つの知識として、1つの歴史として、1つのカルチャーとして。今回のコラムが何か考えるキッカケになってくれたら嬉しい。

 ということで、軍人でも何でもない私が所有するミリタリーアイテムのストーリーを放出したい。

 

【US-NAVY/ALL WEATEAR COAT】🇺🇸

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 1つ目に紹介するのは、アメリカ海軍のバルカラーコート(スタンカラーコート)だ。

 僕の所有するこのバルカラーコートは、1986年製のデッドストック。おそらく海軍の中でも官僚たちが着ていた服ではないか。と購入先であるWORDSの店主と話していた。

 「官僚が着ていた」ことが、カジュアルだけでなくビジネスにも使える説得力を持っている。

 また、ミリタリーアイテムの魅力は、"ソルジャーの命を守るために備わった機能美"

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 コットン50%ポリエステル50%で出来たこのコートは、某オイルドジャケットよりも優れた撥水性を持ち、土砂降りの雨に曝しても15分ほどで乾いてしまう機能性を持つ。

 

【US MILITARY/Fleece Overalls 】🇺🇸

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 WORDSで買ったアメリカ軍のオーバーオールは、Polartec社のフリース素材Classic200を使用した拡張式寒冷地被服システムECWCSで、軽くて暖かく、耐久性と保温性が特徴だ。

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 ECWCSとは、米軍が80年代に開発した寒冷地用の戦闘服の総称であり、寒さに応じてそれらをレイヤード(重ね着)することで極寒地での待機・活動を可能にするシステムだ。Polartecだけでなく、パタゴニアなどのアウトドアメーカーも開発に参入している。

 例えばこのオーバーオールは、第二世代と呼ばれる2006年以降のもので、レイヤードは上下5枚ずつのうち下2枚目にあたる。

 極寒地で活動・待機する兵士の命を守るために、機能性だけでなく着方にまで工夫したECWCSは、軍モノの中でもかなりの人気を誇っている。

 

【French Army/M-47】🇫🇷

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 ミリタリー・パンツ史上1番の名作と称されるフランス軍m-47。その名の通り1947年に生産されたこのカーゴパンツは、60年代ごろまで実際に仏軍に採用されていた。

 

 あのマルタンマルジェラが作りの良さを表現するために、裏返しにしてモデルに穿かせた事は有名だ。

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 m-47の縫製技術は本当に素晴らしい。持っていなかったら一生分からなかったけど、フラップポケットの作りとか、サイドポケットとか、股当て布とか、見えないところにまで細かく気を配っている。

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人が使うことを考えて作るフランス人の服飾魂を感じる。これだから、フランスの洋服は嫌いにならない。

「ディテールは細部に宿る」この言葉はm-47にはピッタリだ。

 

【Norway Army/Field Pants】🇳🇴

  ノルウェー軍のフィールドパンツは、M−47とは対照的な一本。生地は高密度に織られたツイルだ。

 フラップ仕様のフラップポケットや、内側に付けられることであまり目立たない仕様となったカーゴポケット。太すぎず細すぎない絶妙なパンツで、まるでスラックスだ。

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 フラップ仕様のフラップポケットや、内側に付けられることであまり目立たない仕様となったカーゴポケット。太すぎず細すぎない絶妙なパンツで、まるでスラックスだ。

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  ノルウェーは、ジェンダーの平等の名の下に男女を徴兵する国だ。世界でも男女徴兵の軍を持つ国は少数で、ノルウェーでは40年ほど前から女性でも志願することが可能となった。90年代あたりからヘリコプターパイロットや潜水艦艦長へと昇進する女性が誕生した。

 また、ノルウェーは貧富の差も少なく、ワークライフバランスは遵守されている国で有名だ。もしも移住するなら、大自然の中で一人一人が平等な権利を持つノルウェーがいいと感じた。

  

【East German Army/cock shirt】🇩🇪

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 奥渋の高感度なお店BRACKETSで買ったコックシャツ。グランメゾン東京のキムタクに憧れていた僕にとって、この服との出会いは運命だった。 このコックシャツは、ドイツ民主共和国(東ドイツ)軍のもの。ドイツが東と西に分かれていた1949年〜1990年のうち、60〜80年代のものだ。

 

 東西ベルリンを分裂していたのは、皆さんご存知の冷戦の象徴ベルリンの壁

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1961年〜1989年までの28年間で壁を越えようとして射殺された人は191名、向こうに手を振ることも規則違反だった。

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 また、資本主義体制の西ドイツに比べ経済発展が遅れていた東ドイツでは、強制労働を強いられ、言論・思想・表現が制限されていた。

 そんな東ドイツのコックシャツは、柔らかく馴染んだコットンが特徴的で、まるで西側に憧れる彼らのマインドのようだ。

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 長くなったが、ミリタリーアイテムは、有名なデザイナーがデザインしたわけでもなければ、人気ブランドの商品でもない。もっと言えば、もともとはファッションアイテムですらない。しかし、ソルジャーの命を守るための機能性が備わったそれは、その機能美ゆえに私たちの日常に次第に溶け込み、市民権を獲得した。

 これからもミリタリーを掘っていきたい。